声。声は空間をつくる。
毎夜、違う人の違う声でオープニング・モノローグが始まると、袖のモニターを見ている僕らの前で、夜ごとに違う空間がつくられていった。だから暗転の中で出ると、舞台中央にはいつも新しい空気があった。
十二回連続で同じ建物の同じ楽屋に入って同じ公演をするのは、演劇ならともかく、音楽ではあまりない。ツアーなら街々が新しい気持ちを与えてくれるけれど…? という当初の疑問は、このオープニングの形ができてくると消えてしまった。
第一夜のオープニング・モノローグはBOSEくんで、オルゴール明けで照明がつくと、満員の客席はどよめきながら笑ってくれて、おかげでアホらしくかつ楽しく、十二公演が始まった。
BOSEくんは十二夜を通じてシャドウ・ギャング(影絵団—後述)たちと舞台裏でいつもの多才をふるっていただけでなく、僕のモノローグにしても、楽屋で彼の反応をもらいながら仕上げるのが常だった。
そうだ、影の話をしなくては。