Kenji Ozawa 小沢健二 オペラシティ 第1夜
小沢健二, 街奏十二夜, iOS

 声。声は空間をつくる。

 毎夜、違う人の違う声でオープニング・モノローグが始まると、袖のモニターを見ている僕らの前で、夜ごとに違う空間がつくられていった。だから暗転の中で出ると、舞台中央にはいつも新しい空気があった。


 十二回連続で同じ建物の同じ楽屋に入って同じ公演をするのは、演劇ならともかく、音楽ではあまりない。ツアーなら街々が新しい気持ちを与えてくれるけれど…? という当初の疑問は、このオープニングの形ができてくると消えてしまった。


 第一夜のオープニング・モノローグはBOSEくんで、オルゴール明けで照明がつくと、満員の客席はどよめきながら笑ってくれて、おかげでアホらしくかつ楽しく、十二公演が始まった。


 BOSEくんは十二夜を通じてシャドウ・ギャング(影絵団—後述)たちと舞台裏でいつもの多才をふるっていただけでなく、僕のモノローグにしても、楽屋で彼の反応をもらいながら仕上げるのが常だった。


 そうだ、影の話をしなくては。

[ 東京の街が奏でる; 第一夜; 小沢健二; オザケン; Kenji Ozawa; ]
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