Kenji Ozawa 小沢健二 オペラシティ 第6夜
小沢健二, 街奏十二夜, iOS

 影絵の制作をエリザベスと始めたのは2011年、LAのヴェニス・ビーチに住んでいた時だった。最初の照明は工事現場用のライトで、スクリーンはシーツ。

 気づいた人も多いと思うけれど、街奏十二夜への道のりに、ひふみよに書いた「手」という気楽な文章と、「町に血が流れる時」という気楽でない文章がある。

「政治とは、銀行や大企業などのビジネス界が社会に落とした影にすぎない」という考え方がある(デューイら)。芝居のような政党政治に熱中している人にはピンとこないだろうけれど、「なるほど」と思う人は、本当は多いと思う。

 あるいは、オペラシティという言葉は二つの意味で使われる。一つは音楽ホール。もう一つは、情報産業センター。前者は地上六階ほどで、後者はその上、地上五十四階まで続く。前者のイメージに隠れて、後者は見えにくい。逆に、後者なしには、前者はない。

 前者と後者は、意味としてお互いの影になっているだけでなく、周りのビルから見ると、低層の音楽ホールと高層の情報センターは、お互いが生む影になっているようにも見える。

 影は美しく、危ない。光との関係も謎めいている。薄暗い月明かりだけの野原では、実は、視界は良い。しかし都会の強い光のある夜には、死角が無数に現れる。

 実物の巨大影絵はエリザベスがNYで試作して、東京での四日間のホール・リハーサルで、シャドウ・ギャングたちと照明陣によって息吹を得た。

 第六夜のゲストは北原さん。アンコールではドアノックに、彼の甘美なトロンボーンが加わった。

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Kenji Ozawa 小沢健二 オペラシティ 第六夜