Kenji Ozawa 小沢健二 オザケン 第八夜 文章
小沢健二, 街奏十二夜, iOS

 ピアノの鍵盤を金槌で叩いて弾いたら音は相当でかくなる。ギターをピックで弾くのはそれに近くて、指に比べて、音は数段でかくなる。

 オペラシティでは小音量の編成で、指でクラッシック・ギターのアルペジオを弾く曲を多くやった。春にして君を想う、それはちょっと、神秘的あたりは、服部さんの繊細な弦編曲と、愛さん、怜奈さん、かおりさん、真理さんの豊かな感性と技術と、いつもの僕ら三人の音がうまく溶けて、独特の音像になっていたと思う。

 ピックの曲では、ある光で例の50sのストラトを真空管アンプで歪ませて弾いた。強い気持ち、ラブリーなどは、さよなら、痛快、流星のシングルのオリジナル録音で弾いたギブソンを、ライブで初使用した。

 天使たちのシーンは前奏を指で弾いて、途中からピックへ。移行に失敗した日が一度。死ぬほど焦った。

 クラッシック・ギターは、例の三弁の花模様のついたステューディオ・クラッシックと同じ製作者が、ブラジリアン・ローズウッドで作ったもの。良い音だと思いませんでしたか? 

 ぐっと心に迫る沖さんの朗読で始まった第八夜。アンコールはオルガン入りのドアノックで、全十二夜でピアノ系の楽器が唯一入ったのが、この時。上空一点に収束していく木製の空間を彼の暖かく現代的なオルガンの音が満たして、夜が終わった。

 終演後の楽屋前の廊下は大騒ぎで、この辺からは笑顔ばかりの公演になる。と同時に、終わりが始まる。

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