メトロノームは全部で五十五台使った。製造年代も、メーカーも、大きさも様々。バンドでリハーサルをしながら一曲一曲で使うものを選んでゆき、残りがオープニング用として、舞台上と、舞台横の二、三階照明脇に並んだ。
開演は基本六時半。六時二十分頃、メトロノームたちがホールに響き始める。カラン、カタン、カララ、カカン。最後のメトロノームが舞台中央で止まるのに合わせて、暗転。
暗転の中で出たゲストが、オルゴールを手回しする。手回しなのでテンポはその人次第で、抑揚も色々。不思議と、女性のほうが滑らかにオルゴールを歌わせていたように聞こえた。
ライトがつくと、第七夜は原田郁子さん。アンコールは僕らが旅に出る理由。半年して秋にも、彼女を加えたフィッシュマンズと同じ曲をやった。郁子ちゃんは東京という街にとって、大きな存在だと思っています。
つくること、例えば僕にとっては音楽も「うさぎ!」シリーズもドゥワッチャライクも別に同じで、そういう人は多い。けれど彼女の場合はさらに、キチムという空間まで毎日つくっている。お巡りさんやご近所とのやりとりも、妹さんと華麗にソロを渡して弾き抜けてるのだろうか。
第七夜は、いちごが染まるを荒っぽくやってみた。「あげは蝶 ひらひらと鏡に映る」以下は結構激しい部分で、そこを解放して。
リハでこの曲のメトロノームが決まった時は、みんな盛り上がった。大きくて、古い、空洞のある音がするもの。