2012年9月14日 渋谷クアトロ
「お茶でも飲みましょう」
タイピストの記録


(開演前の様子)
小冊子を手にして、読んでいる人
Twitterをしている人。
ひとりでおとなしく静かに座っている人
大人の待つ時間って、こういう感じでしょうか。
立ち見もすごく多く、会場の後ろのほうまで
たくさん立っていらっしゃいます。

Skypeトークショー「お茶でも飲みましょう」、スタート。
画面左に、リビング。「グレートデーン」という犬が
赤いソファに座っています。


「マイクチェック!」(小沢さんの声)
(客席から、軽く歓声!)

小沢さん:
これはアポロという人です。
グレートデーンといって
からだが、180センチくらいあります。
友だちの犬、アポロです。

アポロは、セントラルパークがすごく好きで。
あとはバーニーズに行ったり。
あとは映画も好きですね。
散歩するとか、走るとか、寝るのも好き。
コンピューターは好きじゃない。
風の匂いは大好き。
そんなアポロのいる部屋です。
(きょうはウサギの耳をしています)


小沢さん、画面に登場。
赤いメガネをかけて
チェックのシャツを着ていらっしゃいます。

Typistさんは舞台の隅に座って記録しています。
ここから、追記がある場合は【】に入れて書いていきます。
9月15日 小沢健二】

●今日のことについて、すこし。

きょうは、長いひとつのテキストを
つなげていくようなことをやります。
ステージ上にはタイピストがいます。

それから、本日、Drawcastさんの絵が
舞台上に出てきます。

後でこちら(まとめ)
こちら(ドローキャスト)
こちら(ドローキャスターズ)で見られます。
僕の他の文章はこちらで読めます。

だから、未来にむかって
しゃべっているような気分になっているのですが
お茶の間でTwitterやっている人も、ハッシュタグをつかって
突っ込みたいとか、ボケたいとかあったら
書いてみてください。

●今日は、ニューヨーク・ハーレムから。

ここはアップタウンといわれる地域で
アフリカ系アメリカ料理の店がたくさんあります。

(おそらくサンドウィッチの話をしているところで
音声が聞こえなくなったのですが
途中途中しか聞こえない音声を
聞こえないなりに、お客さんたちが楽しんでいます。
部屋のなかを動きまわるアポロ。
小沢さんの持つマイクをクンクン。)

【NYでは高級なレストランに行くより、町中にある普通の雑貨屋(デリ)で
サンドイッチを注文して食べてみませんか? という話。
パンを選ぶ(おすすめは「ロール」)。
指差してハムとかチーズとか野菜を選ぶ。
メイヨウ(マヨネーズ)とマスタードと…、など調味料を伝える。
で、ばくー。
…、という話をしたのに全く聞こえてなかったらしい…。】

●「お茶でも飲みましょう。」という話になった、いきさつ。

オペラシティの最終日に
楽屋でナタリーの大山卓也くんと
「まぁ、今度お茶でも。」
という話になったんですけれど。
僕はそのまま日本を出てしまって。
それで、今日まで特にお話しないで
今に至るという感じです。
それでは、大山卓也くんをお呼びしましょう。

(大山さん、登場。)

【実はスタッフには
「大山さんと打ち合わせなくて、大丈夫ですか?」と
何度も言われたのですが、打ち合わせるのは嘘くさい気がして、
ほんとにお茶の約束をして卓也くんが現れたような感じで臨んでみました。
結果的にはよかった気がします。】


●Instagramのハプニング。

会場にいるお客さんから
続々と、Instagramに写真の投稿が続いた結果…
「Instagramに、ブロックされてしまった
Instagramに怒られてしまいました。笑
ハッシュタグを変えたらいいみたいです。」

(会場のみんな、笑っています。)

「ハッシュタグは #ozknteaでお願いします。」

【結論 インスタグラムは実況には向いていません。
でも絵がいい感じなんですよね…。こちらで見られます。】


●「ひふみよ」を振り返って。

大山さん:
2010年の「ひふみよ」で、旅するように
いろんなところに観に行って。
盛り上がってしまって、感想を書いたら
小沢さんが読んでくれて。

小沢さん:
本当に、ありがとうございました。
何ていうのかな、「ひふみよ」は
どういうふうに受け入れてくれるか分からなかったけれど
みなさんがちゃんと聴いてくれて。
一語一句、ちゃんと聴いてくれる人がいてくれたことが
良かったし、うれしかったです。

「ひふみよ」は良かったです。
今ではできない感じの空間というか。
あのとき独特の空間があって。

「ひふみよ」ツアーに、ぞろぞろと
お客さんがついてきてくれるのも
旅行してくれる感じがあってよかったです。

(話は変わって・・・
「ひふみよ」ツアーの最初について。
会場が真っ暗なまま、始まったコンサートの話。)

会場を、ずっと真っ暗にしようという話もあったんですけどね。笑
【冗談です! 最後まで真っ暗だったらおもしろかったですが、
会場出られないかもしれないですよね…。
「我ら、時」のCDで、
ぼくらが旅に出る理由の途中で歓声があがるところが
照明がついたところです。
それまでは演奏している方も、手が見えないくらい真っ暗。】
そうですね、どこの会場のことも
鮮明にすごく覚えていて。

あと、「東京の街が奏でる」もそうだったんですけれど
ミュージシャンの友だちが、毎回観に来てくれて
それがうれしかったです。
でも、みんなシャイなのか
あまり楽屋に来てくれなくて。
でも、そういう人にかぎって
ちゃんと聞いてくれるんだなぁと思っています。

ほんとうに、いつもありがとうございます。
「会場に入れるのに、楽屋に来ない。」というのが
うれしいというか。
僕もそういうことするだろうな。
どんな人が来ているか、僕は知っています。
【もちろん楽屋に来てくださった皆様、話せて楽しかったです。
旧友も、新しい友人も。ありがとうございました。】

●「すごく素敵な空間だったことが分かる映像をお見せします。」

小沢さん:
卓也くん、福岡来た?

大山さん:
行った!その映像があるの?

(「すごく素敵な空間だったことが分かる映像をお見せします。」と小沢さん。
最終日の福岡。最初の打ち上げに80人くらいいて
3次会、4次回、5次会と続き、
最後は朝6時くらいの打ち上げの映像があることを
小沢さんが説明されています。
※この映像、とても面白かったです。)

小沢さん:
「ひふみよ」が終わるときは、名残惜しいものがあって。
すごく、特別なツアーでした。
【バーでかかっている曲が気になった方 
The Emotions - The Best of My Loveでした。踊りはこれ。】

●「東京にいるときと、ちがう。」

(今日は、ニューヨーク。
ハーレムからSkype中継していて
アメリカの都市の話。)

小沢さん:
アメリカは、銃がたくさんあるんです。
黒人居住区では、撃ち合いがたくさんあるんですけれど。
撃ち合いがあっても、警察には言わないし、
なるべく警察を呼ばないように、というのが
世間の常識としてあるんです。
1人が撃ったのに、巻き添えで4人逮捕されたりするから。

(こちらでは)「法」というのがあまり厳密に守られていない。
東京にいる時とはちがうというのは
ぼくの本を読んでいる人には
分かるんじゃないかな?と思うんです。

東京って、みんな法を守ってる感じがする。
でも守っていない人は、実は全然守っていなかったり。


●「うさぎ!」を読んで

「あっ!」と思えたら、もう後には戻れない。

「うさぎ!」の21話〜25話。
特に、24話については
大事なことを書いたという自信があります。
21話〜25話は、読んだほうがいいと思う。

僕の音楽を聴いても、後には戻られるけれど
「うさぎ!」は読んで、感じてしまったら
後には戻れないと思います。

たとえば、200年後くらい先…。
そういう先の時間があればの話ですけれど。
音楽は歴史に流れていってしまうものだけど
「うさぎ!」については
「あー、あの話、書いていたやつでしょう?」と
200年後の日本列島でも知ってる人がいるかなと思います。

「うさぎ!」に書かれている内容が怖いから
読みたくない人は、きっと多いのではないかと思います。
「えぇ〜。怖い〜。」とか思う人がいるとしたら
それは、けっこう思うツボだったりします。

そういう人にとって
「関係ないよね。なんか、そういう本あるよね〜。」と
思うくらい、押しのけたくなるもの。
それくらいのものになっていると思います。

「こわい」というものは
わりかし大事なものなので。
そういうことは続けたいと思っています。

「フリッパーズ・ギター」にしても、「LIFE」にしても
「うさぎ!」と似ていて「こわさ」があると思う。

(受け手にとっては)
「めちゃくちゃだな、これ。こわいな」と。
明るそうで、楽しそうなんだけど、怖いという感じ。
音楽は、突き詰めてみたらそんなに怖くない。
「うさぎ!」は読んでみた人は分かると思うけれど
もう後には戻れない。

【怖い、というのはscaryと同時にthreateningという意味も。
両方の意味で使っています。】


●「身体を使っている感じ」と「実感があるということ」

「東京の街が奏でる」は、毎日
すべての過程が、人力で動いている
というコンサートでした。

ほんとうに、すごく大事な、いい空間で。
オペラシティの別世界というか、独立国みたいな場所。
力強めに、信じられる実感のある空間で。

いま、世の中に「無力感」があるじゃないですか?
【ここで、冷静に進行役をしていてくれた卓也くんが珍しく、
「ある」とカメラを向いて真顔で反応してくれたのが印象的でした。】
だいたい仕組みが見えてしまうし。
「どうせ関係ないんでしょ、俺たち〜」みたいな。

でも「無力感」があるなかで
誰かをいじめようと思うと、できる。
人は、メキシコ人追い払おう、とか
いじめみたいなことはできる。

ちょっと小さい実感が持てるいじめとか
すごくあって。
アメリカの「無力感」って、ものすごいから。

オペラシティは、実感がありました。
みんなで影絵をやって、じぶんの身体を動かしたり
ギターを弾きまくったり。

ボーちゃん(スチャダラパーのBOSEさん)にも
つっこまれたんだけれど、実感がある感じで
ギターを弾きたいという気持ちはありました。
【ギターめちゃめちゃ弾いてましたよね、と卓也くん。
そのとおり! ボロボロになるまで弾きました…。】
肉体労働というか、身体を使っている感じ。

「我ら、時」にしても
「東京の街が奏でる」にしても
手を使ってやることって、いいなぁと思っていて。
人力で全部やっているのって、いいなぁと思っています。


●いっしょに生きてるという感じがします。

大山さん:
どうして、Twitterとか
Instagramという形での中継にしたんですか?


小沢さん:
ozkn.netという投稿型サイトをやっていて。
何というか、「もったいない」のかな。


大山さん:
もったいない?


小沢さん:
何て言ったらいいのだろうなぁ。
ozkn.netには、すごくいい文章とか絵が来るんですよ。
そこに投稿してくれる人たちの力とか、
特に文章にはすごいものがあって。
日本にいても、マジックミラーみたいに
自分を見せられているような状態で
鏡の向こうに、誰がいるのかわからない。
どうやら自分のファンがいるらしい。
でも、知名度があると自分の姿ばっかり見えすぎてしまって
それは、つまらない。


大山さん:
いまは、相手の姿が見えて
受け手とのコミュニケーションがある
という実感があるんですか?


小沢さん:
サイトがあるからとかいう話ではなく
今はわりと規模が小さいから
いっしょに生きてる感じがします。
卓也くんのひふみよレポートもそうかな。
「あ、いっしょに生きてる!という感じがしました。」
「人間サイズ」というか。
人がそこにいることが、いいなぁと思って。

【このへんで、
90年代はそういう感じなかったですか? と聞かれました。
あったけれど関係ない話が多すぎて埋もれてしまって、
みたいなことをお話ししました。
そして「今はそういう大規模なことはやらないんですか?」と聞かれたのかな。
今はまたいい人がたくさんいるし、
大規模なことは順番でやればいいんじゃないか、
みたいなことを答えました。
この「順番でやる」というのは結構、大きな可能性を持っていると思います。
そのこともちらっと言いました。
全く音楽に限らず、一人がずっとやる、ではなくて、順番で。】

大山さん:
小沢くんがやっていることって
ほかの人がやっていないし、
みんな刺激的に感じていると思う。


小沢さん:
(ほかのひとが、自身の作品を、CDとか)
決まった形じゃなくて、出してくれないかな?って思います。
【これは僕が自分が「ファン」のアーティストに関しては、
誰についても思っていることです。
文学者も音楽の人も、別の形の作品もやってくれよー、とよく思います。
その方が元の作品の成り立ちもよく見えるし。
さっきもお礼がてらシンコに電話して
「エッセイ集待ってるよ」とお願いしておきました。】

大山さん:
「我ら、時」の箱は
ああいう形じゃないといけなかったんだろうな
とは思いました。
【卓也くんここで、「あれ、めちゃくちゃですけど」と言ってました。笑
 ほんと、めちゃくちゃです。】

小沢さん:
「みんな、ああいうこと(「我ら、時」みたいな
箱の形で作品を出すようなこと。)やってくれないかな〜」と
思ったりはしますね。音楽と関係ないことやってほしいとか
思うんだけれど。
「小沢くんの音楽だけが聴きたいんですよね。」
っていうことばは誠実なようで
「ほかのことしないでくださいね」と言っているように思う。
マジックミラーでよく見えないというのは
僕に限らず、みんなあると思うんですけれど。
みんな、全然、ほかのことして欲しいって思います。


(入場時に引いたトランプ
自分が持っているトランプのマークと数字を
呼ばれたかたは、その人の日常を話すというコーナー。)

小沢さん:
これは最近のスカイプで、いつもやっています。
有名とか知名度がある人というのは、ここでもそうだけど、マイクを持つ人。
話してばっかり。
ほんとうは、みんなに
順番でマイクが回るといいと思うんですけれど。
なので「聞いて!聞いて!」という話を聞かせてください。


●日常の大ニュース1

☆昨年の秋くらいから
うさぎを飼っているんですけれど
妻とふたりでうさぎの爪を切っているのが
楽しかったです。

「わかります。分かるよね?
爪を切っている時とか、実感あるよね。」
と、笑顔で客席に聞く小沢さん。

●日常の大ニュース2

☆今年、わたしの家が外壁工事をしていまして
夜は、窓を開けることもできずにいます。
建物自体がシートで覆われていて。
暑い国を旅している小沢さんに
この夏の残暑を乗り切る方法を
教えていただきたいです。

「生活のテクニックかぁ。
暑い国に行ってると言っても…
でも、シートで覆われているんですよね。
すごい難しい。」と笑って、少し答えに困る小沢さん。

☆そうやって言っていただけただけでも
すごく涼しくなってきたのでよかったです!
ありがとうございました。

【ここで、旅行に行く時に持っていくと最良のものはサランラップ、
という話をしました。
寒いときは体に巻けるし、荷物もくるめるし、防水にもなるし…。
「それ、今日一番役立つ話じゃないですか!」と卓也氏。】


●日常の大ニュース3

☆託児所に、子どもを預けて来ました。
「今日は、小沢くんに会うから
託児所で静かにしていてね」と
子どもに話したのですが
その託児所、おばあさんが子どもを見てくれていて
びっくりしました。「おばあさん?」って。

(小沢さん、面白かったみたいで大笑いしています。)
【だって、
「おばあさん三人が暗がりで子どもにアンパンマン歌って聞かせてる」
って言い回ししてましたよ。笑いますよ、やっぱり。うまい。】
【ここで「おばあさん、大事です」。記憶、感謝します。】

小沢さん:
いつか、子どもからおばあさんまで居られるような場所。
「ブラックパンサー」といわれる人たちの集会に行くと
いわゆるまじめな集会なので
みんな、すごくまじめに話をしているんだけど
周りで赤ちゃんがぎゃーぎゃー泣いている。
白人の会合ではそういうことはないんです。
「ブラックパンサー」では
子どもが泣いたり、わめいたりしているのも
そういう集会の音の一部、という理解をされているんです。
泣いてても、外に連れだしたりしない。
そういうのが、かっこいいなと思っています。
このイベントも、いつか、子どもから
おばあさんまでいられたらいいんだけど。
でも、難しいでしょう? うるさくて文句言う人が出たり。
みんなの理解力がないと難しい。
いつか、子どもを連れてきて
泣き叫んだりしてもOKというのをやりたいと思います。

【この話、確か卓也くんが「赤ちゃんあり」の集会について、
「すてきですね」と言っていた気がします。
そうなんですよ、みんなで理解が通じているのは、すてきです。
でも服役中のジャーナリストが監獄から真剣な電話をしてきている時に
子どもがギャーと泣いたりすると、
うわー、ここでか! とかも思います。笑】


●日常の大ニュース4

☆私は普段、運動をしないんですけれど
はじめて登山をしました。
ふつうよりも、2倍くらいの時間がかかってしまって。
でも、そこに達成感があって。

(小沢さん、
椅子の背もたれに、手に置きながら
感心しながら話を聞いていらっしゃいます。)

小沢さん:
ずばりです。
次のうさぎ!に「実感」ということについての話が
出てくるんですけれど
その中で使ったことばは「実感」と「達成感」でした。
いま、世の中で「達成感」というのが
感じられなくなるくらい、小さくなっていると思う。
達成感って、持てると思うんだけど
みんな、持てなくなってる。
卓也くん、持ててる?


大山さん:
達成感…。
「小沢健二、ライブやりまーす!」っていう
ニュースを出せるときは楽しい。


小沢さん:
達成感とかにみんな飢えてるから
メキシコ人へのいじめとかあるんだと思う。
「無力感」が無くならないと、酷いことは減らない。


大山さん:
「無力感」が、世の中を覆っているような気がしていて。
人は、実感が欲しくて、山に登るのかもしれない。


小沢さん:
「無力感、気持ちいいー!」というようなことには
なりませんからね。


大山さん:
(みんなの、日常の大ニュースを訊いてみて)
おもしろいね、これ。


小沢さん:
でしょ!(と、うれしそうです。)

トランプの力もあるのかなあ。いつもおもしろいです。】


●日常の大ニュース5

(スチャダラパーのアニさんが登場。)
☆えっと、ぼくは今日
スタジオに行ったあと
犬の散歩をして、ここに散歩にきました。

小沢さん:
この前の結婚式の写真、見たよ!
すごい、よかったよ。
すごく、行けたらなぁって思った。

アニさん:
「あいつも来てればなぁ〜」って思ったよ。

小沢:
歌を歌ったよ。

アニ:
聴いたよ。よかったよ。

小沢:
未発表の最新音源です。

【Typistさんが?となっているのを承知で話していたのは
Bobby Womack - Across 110th Streetなどの話でした。失礼しました…。】

●日常の大ニュース6

☆いま忙しくて、デスクワークしているんですけれど
トイレを我慢するのが嫌なので
小走りで行って、小走りで帰ってきています。

(小走りをする真似をする、小沢さん)
【「エビ食べる?」ってやつですね、と卓也くん。
オペラシティでの「小走り」というモノローグの話です。】

小沢さん:
小走りに気がついたら、
もうあとには戻れないですよね。
小走りしているひとを見ていると
東京にいるな、という感じがします。

あ、そういえば。
日本って、テキストメッセージでも
おじぎするんですよね?
顔文字っていうのかな。


●日常の大ニュース7

☆12年ぶりくらいに仕事をはじめました。

小沢さん:
僕は、13年ぶりくらいにはじめたから。笑

☆3人の子どもがいるんですが
いちばん上の、11歳の長女に任せて
「9時には寝てね。」って言って
カレーを用意してきました。
12年ぶりにはじめた仕事が接客業なので
「笑顔!」「げんき!」ということで
職場でよく注意されていて。
「口角をあげましょう」とか。


小沢さん:
接客業って、立ち仕事ですよね。
やってる人はわかると思うけど
立ち仕事って大変ですよね。
僕の場合は
「さよならなんて云えないよ」の
ミュージックビデオを見ていただくと分かるのですが
とにかく花屋で本気で働いてもらうから、って
監督のタケイグッドマンに言われて。
本当に、一日中、本気で花を切っていたんです。
夕方、ほんとに疲れてました。
花屋さんってこんなに大変なんだって思いました。
それが写ってます。


●日常の大ニュース8

☆自分でお弁当をつくっている日常です。
今日、イベントで話題になっている
「実感」っていうことばで言うと
お弁当をつくったりするほうが
買うよりも、実際は高いということを実感しました。

料理という現象は、これからの
裁縫みたいになるんじゃないかなと思っていて。
料理も趣味になるんじゃないかなと思うんです。
料理は消費になっていくと思う。


小沢さん:
あ、そうか。
こういう話、好きです。
知らないひといるかもしれないけれど
ぼくはすごく料理をするんですよ。
料理人さんに教わったりして
どんどん作るようになりました。
もう、生活の一部になっています。
そうそう! 外国人のお客さんが
家に遊びに来るとするじゃないですか。
日本のバーモントカレーみたいな
「カレーライス」を作って
それを日本のお米でお客さんに振る舞うと
「すげー・・っ!(沈黙)」みたいな反応があります。笑


●日常の大ニュース9

☆一年前にオフィスをひっこしたのをきっかけに
冷蔵庫を買ったんです。その、豊かさというか、
氷やアイスクリームが、いつもここにある
ということの素晴らしさがあって。


小沢さん:
みんな目のつけどころがいいと思いますね。
【ここで冷蔵庫すげー、の前は19世紀に蒸気すげー!って話があって、
とにかく何でも蒸気だった時代が。
その後「電気すげー!」がきて、そのヴァリエーションで「冷蔵庫すげー!」か。
冷蔵庫はすごいです。確かに。…みたいなしょうもない話をしました。】
卓也くんの大ニュースなんですか?


大山さん:
最近、友だちとお茶を飲むと
1杯目から、がぶがぶと飲んでしまうんです。
でも「あぁ、おかわりすればいいんだ」って気がついて。


小沢さん:
「おかわり」って「一語」じゃないですか。
その「おかわり」ということば。
(「おかわり」と言いながら
 手を添えて、熱心に説明する小沢さん。)
「おかわり」ということばは凄くいい。
だから、2回めに、別のものをオーダーしちゃダメだと思う。笑
【えーと、「おかわり」という言葉の中に、
先人の「おかわりは良いものですよ、しなさいよ」
という気持ちが入っている、という話でした。
良いものなので一語にしときますからね、
気がつきなさいよ、死ぬ前に。みたいな。】

●日常の大ニュース10

☆昨年、東京にきました。
24人でシェアハウスで暮らしています。
学生さんとか、料理人のひととか
OLさんとか、いろんな職業のひとがいます。
そんな感じで毎日過ごしているのですが
そろそろ、一人暮らしをしようと思っていて。
東京の街で、好きな場所とか
ここ、いいですよというところがあれば
教えてください。


小沢さん:
hihumiyo.net に載せている、緑色の地図
あの地図には、和光(中学)を入れ忘れたな。
それをやっていて思ったんですけれど
僕は小田急線沿線だったので
そのへんをよくわかっていたんですが。
事務所は築地にあって。

それこそ「さよならなんて云えないよ」の
ミュージックビデオは、銀座の花やさんです。
渋谷や下北沢って、わりと知ってる場所なんですが
銀座とかは、大人になって知りましたね。
東京といっても、東のほう。
東京といっても、広いから場所によってちがう。


--朝を迎えて、太陽の光が
すこしずつ差し込んできているお部屋の様子が見えます。-


●さいごに。今日のSkypeトークショーを振り返って

小沢さん:
本当に、こういうふうにやらせてもらえて。
あたらしく空気を吸っている卓也くんと
話をさせてもらえて、ありがとう。


大山さん:
「今度お茶でも飲みましょう。」って
僕から言っておきながら
連絡先とかきいてなかったな、と
あとで気がついたんです。でも
こういうふうに話せて、なんだか変な感じです。


小沢さん:
ちゃんと話したいこともあるし
あたらしい東京の空気を吸えて良かったです。
ありがとう、卓也くん。


大山さん:
今後の予定とかないんですか?


小沢さん:
(少し微笑んで)
分からないです。
どうとも言えなくて、分からないですね。


(お客さんに向かって)
hihumiyo.net 見てみてください。
それこそ「実感」がある感じで文章をページにあげると思うし。
お知らせしたいことがあれば、ここでお知らせすると思うし。
僕に対して「こういうこと、話したいなぁ。」というのがあれば
今日(の「日常の大ニュース」)みたいな話、聞きたいし。
ただ、小沢健二の専門みたいになるのは
やめたほうがいいと思う。
僕なんかよりも、もっと楽しいことがあると思うし。

たまに、ozkn.net 宛てに
すごく、するどい文章があがってくるのは
すごくスリルがあるんです。
【サンプルは「散歩」というページで読めます。】
アカデミックな話をするのは簡単。
ozkn.netは実はとても難しくて、おもしろい。
とにかく、小沢健二に粘着している人みたいに
ならないほうがいい。笑

なんか、もう
「みんなそれぞれの暮らしがあるんだから
それぞれの暮らしを生きましょうよ。」と
(「東京の街が奏でる」の)第6夜でいったことと同じなんだけれど。
ソーシャルメディアを使っているうえで
そういうことを思いました。

【僕はいわゆる「ファン」のことを「粘着」と思ったことはありません。
たまに「ファンって嫌ねえ、気持ち悪い」的なことを言う人がいるではないですか? 
誰のファンのことであっても。
あれを聞くと僕は
「そんなことないですよ。ファン、全然いいですよ」
と反応することにしています。
その辺のことは「Believe/文学のテクノロジー」を読んでいただければわかります。

ここでの「粘着」とか「専門」という言葉は、
ネット用語と思ってくれた方が良いです。
このネット上のイベントをやるにあたって、
ひふみよスタッフの間で出ていた言葉です。
「有名人Aの話題につきまとってフォロワー数を上げる人」とか、
「複数のアカウントを持って自分のツイートをRTする人」とか、
二十四時間ネットに住んでる人。
有名人Aが本当に好きなわけではなくて、
ネット上で遊ぶための道具として有名人Aを使ってる人。
サイトをやることで、その手の人を助長したくないな、とは思います。
まあ、99.9%の人間には当てはまらない意味での「粘着」です。】

やっぱり、ちょっと…。
そうですね、
実感がある生き方をしたいなぁと思います。
卓也くんってTwitterやってて
めんどうくさいなあとか、楽しいとかありますか?

(「楽しいですよ。楽しくやっています。」と、大山さん。)

大山さん:
(小沢さんとお客さんのあいだに)
良い距離が取れているのかもしれないですけれど
【これは僕には卓也くんがツイッターで人とうまく距離を取れている
という意味に聞こえました。】
ソーシャルメディアを使いつつも
小沢くんがコンサートやってくれたら
それを観て、僕たちも「実感」したいなぁって思っています。


小沢さん:
僕は雑誌の取材などは受けられないので
たとえば、「何にもやんない」はできるけれど
「何にもやんない」よりは、ちょっといいかな〜と思って
サイトとかはやっています。
もちろん「書きもの」や「コンサート」は
ソーシャルメディアとはぜんぜん違うものです。
みっともないことはしないようにします。

(小沢さん、どこか達成感のある表情をしていらっしゃいます。)

最後に、(今日、DJをしてくれている)シンコくん、
本当に、贅沢で申し訳ないくらいで。
みなさん、会場で、友だちつくったり、
「煙茶」を飲んだりして楽しんでください

(会場のみなさんの拍手)

おしまい。

【友人に「会場の熱気がすごかった」と聞きました。
そんな会場にしてくださって、ありがとうございました。
Typistさん、そして終わったらマラソンを走り終わった後のように疲れ果てていた
というDrawcastさん(描画中の手もと)に、拍手を(心の中で)。】
【そして大量の紅茶を湧かして、
はちみつを溶かしてくださった、クアトロ!】